パチプロを始めて、約1年と9ヶ月で100万円もの貯金をすることができた。
子供の頃、親とか友達とかがいっつも百万円で話題をしてた事を思い出した。
「百万円あったら、ラスベガスいくのになーーー」とか、
「百万円あったら何するかなー?」とか、
そんな遠い存在だった百万円が今、俺の手にある。
銀行から卸して手にしたそれは、想像とは遥かに違って軽く薄いものだった。
封筒にも軽く入ってしまう。
俺は、まずそれをどうしようか考えていた。
まずは、パチプロをやるときに抱いていた一つのことを果たそうと思った。
それは、
「家計を手伝う事」
まず寝ていた親をたたき起こし、
「百万円だよ!」
と、子供心に見せに行った。 嬉しくて自慢したくてしょうがなかったのだ(笑)。
そして、その中から30万円を渡した。 |
少しでも家計が楽になるといいな、と願いながら。
母は、涙して喜んでいた。
俺はその姿を見ただけで、パチプロをやって良かったと思えた。
こういった稼業をやっていると「社会貢献をしていない…」と言った理由から
自分の存在価値を考えてしまう事がよくあるんだ。
これからも、もっともっと稼がなきゃな、とより一層意識が強くなった。
そして、とある夏の日、俺は友達といつものように居酒屋で呑んでいた。
少し酒も回ってきて良い感じになったところで、友達が一言行った。
「キャバクラ行ってみねえ?」
俺は行った事がなかったので、正直怖かった。
法外な値段を取られるんじゃないか? とか、
魔女のように男を騙す人がいるんじゃないか?とか…。
ただ、そのときは酒の力も手伝ってか、行ってみようということになった。 |
初めて足を踏み入れた瞬間、ディスコ? と思った。
ミラーボールが天井にあったから、そういうイメージになったんだと思う。
だがそこは、正真正銘のキャバクラだった。
店の中には、卑猥な声をあげながら笑うオヤジたち…。
仕事帰りに寄ったのか、くたびれたシャツにネクタイを外したスーツ姿のサラリーマン。
力仕事をしているのか、土方の格好をした、体格の良いお兄ちゃん。
そして、パーティー会場のようにドレス姿に身を飾っている女性たち。
俺は友達と、隅っこの方のソファーに腰を卸し、ビール2つを注文してちびちびと飲み始んでいた。
ビール一杯1000円という法外な値段には驚いたが、まー1000円ぐらいなら大丈夫だろうと気にしないでいた。 |
そして5分ほどすると、
「あゆでーっす」
少し酔っ払っているのか、暗がりの中でもわかるほど、ほんのり顔の赤い女の子がきた。
多分、年上だろう…。
友達は指名をしていたらしく、既に仲良く女の子と喋っている。
俺は緊張していて、あまり話し掛けることができなかった。
それでも、頑張って話していたのだが、次第にお酒が進むに連れ、自然に話せるようになった。
ただ、全く知らない女性と、お金を払って話すというのは初めての経験だったので、凄く新鮮で複雑だった。
話した感じがとても雰囲気の良い女性だったので、俺は友達に指名の方法を聞いた。
そして「場内指名」というものをして、あゆちゃんとずっと話していた。
1時間5000円は少し高い気がしていたのだが、楽しくなってきていて気付けば3時間も呑んでいた。
会計の時に払った金額は、俺が呑んだビール3杯分と女の子が呑んだカクテル5杯分。
そして場内指名料を合わせて30000円。 |
その日はなんとも思わなかったのだが、次の日にサイフを見て俺は思った。
「うわーーー、もったいねええ!!」
だが、ちょこちょこあゆちゃんからメールが来て、俺は足を運ぶようになった。
最初は友達を呼んで二人で通っていたのだが、次第に一人でも足を運ぶようになった。
最初は週2回、気付けば週に4回も通っていた…。
いつのまにか仮想の恋をしていたのかもしれない。
仕事の後にも呑み(アフター)にいったりするような関係にもなり、
俺はもう付き合っているような気分だった。
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ただ、それとは裏腹に毎日遅くまで呑んでいたのが響いたのか、
9月の収支は+22500といったダメっぷり。
さらには、当時付き合っていた彼女とまで、
女の子から来るメールやグータラ生活が原因で別れてしまった。
そして一番驚いたのは、
預金を見たら5万円しか残っていなかったこと。
ここで俺はやっと気づいた。
「何をやっているんだ俺は」
たった、一人の女に自分の生活を全て突っ込んでいるではないか。
これじゃあ自分がダメになる。
そうおもった時に、あゆちゃんから極めつけのメールがきた。その内容は、 |
「今月ね、家計が厳しいの。。。3万円貸してくれない?」
もうダメだ…。
ここで貸したら俺は終わる。
この恋愛は、やってはいけない恋愛だ。
親を助けるどころか自分が借金まみれになる。
そう思った時には、携帯ショップに足を運び携帯電話を買い換えていた。
もちろんあゆちゃんには番号もメアドも教えていない。
キャバクラとは縁を切ることを心に誓ったのだ。
さらには、さっそくクランキーコンテストで手堅く稼ぎ、昔のコツコツ勝つ感覚を取り戻す。
ただ、やはり台を打っているときにも、あゆちゃんのことが気になってしょうがなかった。
「本当に家計に困っていたのではないか?」
「本当に俺のことが好きだったのではないか?」
色々な想いが頭を交差したが、
俺は自分の置かれている状況を考え全てを断ち切った。
そしてコツコツ軍資金を増やしながら、隣駅のホールの6時オープンにいったとき、ある張り紙を見つけた。
それを見つけた瞬間、俺は店員に向かって血相を変えて聞きに行った。
俺「これ本当ですか?」
店員「はい、本日から、となっております」
俺はその張り紙を見た瞬間に、
潰れそうになっていた自分と、失ったお金を取り戻せると思った。 |