「もうこの攻略法も末期だな」
そうみんなで話していた。
もう終わるのかな?
俺はそう思っていたが、ここで終わるわけではなかった。
全員で話した結果、ここからは戦略を一変させることにしたんだ。
「バレないようにこそこそ抜く」
というスタンスを、
「バレてでもガッツリ抜く」
という戦法に切り替えた。
この方法は、攻略法が本当に末期であることを示す。
もちろん、行く店では「出入禁止」覚悟だ。
だから地元ではやらない。
地方遠征がメイン。
こうなってくると多人数の方が強いので、いつものメンバーでまだ使えそうな店を選び、イナゴのように店を襲う。
もちろん朝から打ってるのは全員身内。 一機種全台を埋め尽くす事だってあった。 |
また、当時あった張り紙はこんなものだった。
「レバーにゆっくり触れてのご遊戯はご遠慮ください」
「攻略法を発見した場合、警察に通報します」
などなど。
だが俺らは、もちろんそんなの関係なし。
そしてみんなで打っていると、店の人間が話しかけてきた。
店員「あの〜〜、レバーをゆっくり下げてのご遊戯は遠慮していただきたいのですが?」
身内「え? じゃーレバー叩くなってこと? あほちゃうか。」
店員「ですが、規則ですので…」
身内「こっちは金払って打ってんだよ! どうこう言われる筋合いないだろうが」
店員「…」
こんな感じで店員が引き下がっていく。 |
だが、重役クラスが出てくると一味違う。
パチンコ屋の上に居る人間なんて、ヤクザみたいなものだ。
いや、実際ヤクザもいるだろう。
そして実戦してから3時間ほどした時、しびれを切らしたのか? とうとう出てきたんだ。
白服が3人ぐらい…しかも、今までの平店員とは違って貫禄がある。いかにも絡みたくないような人たちだ。
美容院ではなく、床屋にいってパーマをかけてそうな髪型。
そんな人たちが、空き台から次々と無言で電源を落としていく…
端から1台1台電源を落としながら、身内の台に迫ってきた…
きたらめんどくさいなー、と思いながら実戦を続ける…。
そして身内の台に差し掛かった。 |
白服「あのーご遊技やめていただいてもよろしいですか?」
身内「なんで? 23:00まで営業してるんだろ?」
白服「えー、機械調整の為、電源を落とさせていただきます。」
身内「あほか、いま出てるんじゃ。
出たらやめてくださいっていわれて、はいそうですか、ってヤメる奴がいるか?」
白服「じゃー電源落とさせて頂きます」(もうこちら側が言ってることは無視。強引に台を空けようとする)
身内「てめー、客なめてんのかおらーーー」(片膝で台の鍵穴を抑えながら)
身内「筋ってもんがあるよな? 出てるからいきなりヤメてくださいじゃあ、おかしいやろ、
調整があるので何時までの営業にさせて頂きます、とか言えんのか」
白服「攻略法を使ってますよね?」
身内「ゆっくり打ってることがいかんのか? じゃーその攻略法、やってみろや」
こんな感じのやり取りが、1時間ほど続く…。
だが、こちらの3人が店員ともめてる間にも、ほかの10人近くはしっかりと抜いている。
明らかにホール側の方が分は悪い。
結局、1時間近い話し合いをした上、白服が分が悪いと思ったのか、
あと3時間後に閉店しますとマイク放送をしていた。 |
その条件にはこちらも納得した。
お互いに「譲歩」という状況なら俺達だってうなづく。
ただ一方的に、さもあたりまえのように遊技を止められることが気に食わない。
向こうが引けない理由はわかる。
だからって、こっちが引く理由もない。
お互いに、同じ土俵の上で勝負をしているんだ。
ミスがあれば容赦なく突く。
それはゲームだって、ギャンブルだって…勝負事ならなんだって同じ。
決まっている営業時間と、決まっているルールの中で最大限の努力をして勝つ。
自分で勝機を見つけた者や、人よりも早く情報を得たものがどの業界でも勝者なんだ。
リプレイハズシだって、小役狙いだってそう。
立派な攻略法。
ルールなんてものはない。
ただ、攻略法において、ホールが一番の被害者であることも忘れてはいけない。
悪いのは、攻略ができる機種を作ってしまったメーカーにある。
だから、そういう場合は大抵ホール側がメーカーに保障を求める。
それでもホールは、利益を守るために攻略グループと戦う。
金銭うんぬんと言う事より、プライドの問題なのであろう。
そしてこの日は、朝の10:00〜18:00ぐらいまでの実戦となった。
こんな感じの方法で、3日ぐらい動き続けたのだが、主に動いたホールは、埼玉県が中心。
もちろん、稼動した地域で揉めるのはあたりまえで、時には警察が来た事だってあった。
また、プロ同士で揉めたこともあった。
これは、ある一定のルールを相手が破った時に起こる。
・最初にこちら側がシマに入っているのに、何の挨拶も無しに後から来て攻略法を実戦する。
・こちら側の手順を真似して打ち出す。
主にこの2つだった。
もちろん、こんなことをされたときには
「ほかの店でやってくれ」とか「どこの組織で動いてんの?」とかをまず聞くことにしていた。
「知り合いの知り合い」と言うこともあるので、いきなり敵視してしまうと誤解を招く。
また、大抵こんなもので動いている連中はどこかで繋がっていて、そのほとんどが知り合いだった。
揉める相手がいたときは、大体が素人だったんだ。 |
そして攻略法が発覚して一週間が経った。
騒動も落ち着き始め、今回の攻略法の余韻に浸りながら、俺達は普段の生活へと戻っていった。
実際、その後はコピー対策部品を取り付けられたりして、全く稼げなかったらしい。
メーカーの対策は迅速だった。
だが俺は、もしまたコピーができたらいいな、と言う軽い期待を込めて、一路青森へと向かった。
旅打ちが好きだったのもある。
まだ攻略法ができるとこがあるんではないか? という淡い期待を持っていたのもある。
そして、片道8時間ほどかけて青森に到着。
宿よりも先ず先に入ったのがパチンコ屋だった。
さびれた店の奥の方に『獣●』が置かれていた。
なぜか張り紙もしていない。
もしかして、まだできるのか?
ワクワクした気持ちを抑えながら、いつものようにコインサンドへと薄汚れたお札を入れる。
ガラガラの店内で、軽く店員の位置を気にしながらゆっくりとレバーを下げる。
だが、再び同じ役が揃う事はなかった…。 |