もし俺が親になったら、きっと離婚はしない。
そう心に誓って、その場は通り過ぎた。
ただ、目の前にいるお相撲さんは、そんな俺が育ってきた境遇とは別格のものだった。
パチスロだけで、30歳までに5000万を貯めた人だっている。
周りでは、1〜2千万を貯金している人だっていた。
中には、キャバクラが好きで好きで全く貯めない人もいたのだけれど…。
5000万でさえ凄いと思っていたのに、そのお相撲さんは、1千万2千万を簡単に使う。
車だって1200万のものに乗っている。
すごい…。
話してみて俺が思ったことは、その一言に尽きた。 |
とりあえずは、そのポイントを使って、毎週設定5の『大花火』を5割で打ちにいった。
お相撲さんを紹介してくれたS氏に感謝しつつ、平日は学業、土日はポイント消化に精を注いでいた。
また、俺がいけないときには後輩に3割ぐらいで打ってもらい、俺とS氏で残りの2割を分配していたりもした。
だけどなぜか、俺が『大花火』を打ったときは全く調子がよくなかった。
実質、平均で6500枚出るはずなのだけれど、6回ぐらい打った俺の平均は3000枚程度だった(笑)。
時には、負けることだってあったんだ。
その反動か、友人のS氏は『猛獣王』の設定5で、15000枚を叩き出したりしていた。
もちろん、俺が『猛獣王』を打つと、決まって2000枚が限界だった…。
なぜかこの店とは相性そのものが悪かったのだ。
ポイントをくれたお相撲さんも、時間があればちょこちょこ見に来てくれた。
「どうだプロ? 今日は出てるか?」
そういって、マクドナルドの「照焼きマックバーガー」を差し入れたりしてくれ、とてもお世話になった。
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そんな優しいお相撲さんが、時には強烈な怒りを店の主任にぶつけている場面もあった。
確かその日はイベントで、高設定台を札でナビしていたんだ。
お相撲さんは朝一からキンパルの札台を取っていた。
それがなんと、朝一から天井(1280G)を越えてしまったのだ。
お相撲さんは、ストックを飛ばされたと思って主任を呼びつけた。
お相撲さん「あのな、高設定台のストック飛ばす、って客ナメてんのか?」
主任「申し訳ありません…。」
お相撲さん「毎日な、打ちに来てる客に対して、ありえんやろ。」
主任「申し訳ありません…」
こんな感じで30分ぐらい怒鳴りつけていた。
やはり、尋常じゃない修羅の道を潜ってきた人なだけに、怒りはすさまじいものだった。
もし暴れたら、大変なことになるだろうことも容易に予想がついた。
俺と友達のS氏が、2人で止めても全く無駄だろう。
きっと、俺達のような一般人が10人がかりでも止めることはできない。 |
そんな人が怒っているのだから、主任も顔を真っ青にしている。
ただ俺は、これを聞いている時に一つ思ったことがあった。
今まで俺は、パチンコ屋はそんなものだ、と諦めていたような部分がある。
それでは、問題は解決されないのだ。
お相撲さんのように、間違っていれば間違っている、とハッキリ言わなければパチンコ屋も、やり方は変わらないだろう。
正直な気持ちをぶつけるこのお相撲さんは、一番人間らしいのだ。
そんな事件もあったが、このポイントを使い終わった頃、お相撲さんから一つの誘いがあった。
お相撲さん「プロは、コンピュータ強いんだろ?」
俺「はい、一応勉強しています。」
お相撲さん「うちの会社で働かないか?」
俺は、思いがけない言葉に、ホールの騒音さえも聞こえなくなるほど、驚いていた…。 |